相続人調査を行わないまま遺産分割協議をしてしまい、他に相続人がいることが後で発覚すると、その協議は無効になってしまいます。そのため遺産分割協議を進める前に相続人調査を実施しておく必要があります。
自分で調査をすることも可能ですので、その際知っておきたい調査方法についてここで解説していきます。
相続人調査は自分でもできる
相続人の調査にあたりすべきことは、①故人の戸籍謄本を集める、②戸籍を読み取り親族関係を洗い出す、③洗い出した情報をもとに相続関係説明図を作成する、の3ステップです。
そのため相続人の調査は戸籍集めが基本となります。
戸籍を取得するのに特別な専門家たる資格は必要なく、自分でこれらの作業を進めていくことも不可能ではありません。
相続人調査を進めるにあたり押さえておきたい知識を以下に挙げていきます。
戸籍謄本の取得方法
戸籍謄本を取得するには、本籍地の市区町村役場で手続を行う必要があります。手数料として、1通あたり450円ほど必要になります。
必ずしも窓口に直接行く必要はなく、郵送で申請することも可能です。ただしその場合は切手を貼付した返信用封筒を同封する必要があります。
なお、赤の他人が請求することはできず、取得しようとしている戸籍の構成員あるいは直系親族に限られています。その他の代理人に取得を依頼する場合は、基本的に委任状を用意する必要があります。
相続人調査で集めるべき戸籍の範囲
相続人を確定させるには、多数の戸籍を集めていく必要があります。故人の戸籍を1つ取得して終わり、とはなりません。
少なくとも、“故人の出生から死亡までの戸籍謄本”は必須です。
その上で、集めた戸籍をもとに確認が取れた相続人全員の現在の戸籍謄本も取得しておきます。相続人かどうかは民法の規定に従って判断が可能です。
まず、配偶者は常に相続人となることができます。
そして配偶者以外の親族の中から共同相続人となる人物を探すことになります。
優先的に相続権を取得するのは「子」です。
子がいない場合、続いて優先されるのは「直系尊属」です。亡くなった方の親や祖父母のことです。
そして子も直系尊属もいない場合に、兄弟姉妹が相続権を得ることになります。
故人の子がすでに亡くなっている場合には、その子に関する出生から死亡までの戸籍謄本も集めていくことになり、作業量は増えます。
そしてすでに亡くなっている子に、さらに子(故人の孫)がいることがわかった場合、その故人の孫が代襲相続をすることになります。
孫などの代襲相続人がおらず直系尊属も亡くなっている場合、その直系尊属の出生から死亡までの戸籍謄本を集めます。その上で、さらに兄弟姉妹の中に亡くなっている方がいるなら、その人物に関する出生から死亡までの戸籍謄本も集めていくことになります。
相続関係説明図の作成方法
相続関係説明図は家系図のようなものです。これを作成しておけば状況が整理しやすくなり、それ以降の相続関係手続が進めやすくなります。
相続関係説明図を作成する際は、被相続人や法定相続人に関する次の情報を整理しておきます。
- 氏名
- 住所
- 出生日
- 亡くなった日
- 被相続人との続柄
これらの情報を、法務局が公表している様式を用いて落とし込んでいけば作成できます。
様式についてはこちらのページ(https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000015.html)から取得可能です。
相続人調査の注意点
最後に、相続人調査を進めるにあたり注意すべき点をまとめていきます。
連続した戸籍を集めること
故人の戸籍については「出生から死亡まで」のものを集めていかなくてはならず、断続的であってもいけません。出生から死亡までが“連続”している必要があります。
連続した戸籍謄本を集めていくには、死亡時点の戸籍から始めて一つずつ遡っていく方法が確実です。
- STEP1:亡くなったときの除籍謄本を取得する
- STEP2:除籍謄本から前の本籍地の記載を確認する
- STEP3:前の本籍地の戸籍謄本を取得する
この作業を繰り返し、被相続人の出生にまで到達すれば完了です。
婚姻・離婚や養子縁組の履歴をチェックすること
集めた戸籍の内容を見る際、「婚姻」や「離婚」、「養子縁組」などの記載に着目しましょう。「転籍」や「認知」も要チェックです。
これらの記載がある場合、その情報が記載された年月日に対応した戸籍謄本を調べます。
離婚や養子縁組などが把握できていないと、予想外の相続人が出てくる可能性が残ってしまいます。
わからないこと・不安がある場合は専門家に依頼すること
相続人調査は自分で行うこともできますが、戸籍集めや戸籍の読み取り、相続関係説明図の作成など、慣れない作業もたくさん行わなければなりません。
故人が婚姻・離婚を繰り返しているケースや養子縁組をしているケース、代襲相続が発生するケースなどではより複雑化してきます。
チェックに漏れがあるとその後の手続が意味をなさなくなるなど、大きな労力を要することとなってしまいます。遺産分割協議がなかなか進められず相続税の申告が遅れてしまうと、ペナルティを課されることもあります。
調査が不十分で協議に参加できていない相続人がいたり、手続がごたついてしまったりすると、親族間で揉めることもあります。
こうしたリスクを排除するためにも専門家に調査を任せ、確実に、効率的に手続を進めていくことが推奨されます。