土地や建物については所有者を記録し、これを一般公開しています。この仕組みは「不動産登記」と呼ばれ、権利関係を明瞭にし、取引の安全および円滑の実現のために機能しています。
実務上、不動産を手に入れたときは登記手続を行いますのでここで制度の基本的なこと、費用などを確認しておきましょう。
登記の目的
登記を行うのは不動産だけではありません。会社のことや成年後見のことなど、いくつかの分野で登記制度は活用されています。
いずれも、国が管理している「登記簿」に権利関係を登録することで大切な財産や権利を守ることが目的とされています。また、権利者を守るだけでなく、その情報を広く公開して円滑な取引ができるようにするのも重要な目的の1つです。
例えば土地や建物の購入をするとき、人生の中でも大きな買い物であるにもかかわらず「もしかすると売主は本当の所有者ではないかもしれない」「この土地は担保として使われているかもしれない」といった不安があるとなかなか成約に踏み切れません。
また、購入手続を済ませたものの売主が二重売買をしてしまい2人の買主が所有権をめぐって争う危険性もあります。
しかし、登記簿に記録された情報から所有権などが確認できれば安心して購入に踏み切ることができますし、登記を備えておくと二重売買があっても自らの権利を主張しやすくなります。
登記により権利関係が絶対的に保証されるわけではありませんが、不動産売買におけるリスクはかなり下げることができるのです。
不動産登記の種類
不動産登記は、①表示に関する登記と②権利に関する登記の2つに分けることができます。
① 表示に関する登記
・・・土地面積や地目、建物の床面積や構造のことなど、不動産の物理的な情報を公表するための登記。建物を建築したときや、土地の区画を分けた(分筆した)ときなどに手続を行う。
② 権利に関する登記
・・・不動産の所有権や抵当権、賃借権など、不動産の権利について公表するための登記。不動産を購入したときなどに手続を行う。
①の登記に関しては申請の義務が法律上課されています。一定期間内に登記申請を行わなければ10万円以下の過料に処されることがあるため注意しましょう。
②の登記に関しては基本的に義務ではありませんが、2024年4月からは「相続登記」が義務です。所有者不明の土地が社会問題になっていることから、相続で取得した不動産に関して3年以内に登記を行うことが義務化されたのです。
不動産登記の基本的な流れ
「売買」や「相続」、「建物の建築」などの行為が不動産登記の原因となります。そして不動産登記の原因となる法律行為の存在を客観的示すため、契約書などを準備しておかなければなりません。
売買による不動産の取引があったのなら「売買契約書」、相続で不動産を取得したのなら「遺産分割協議書」、建物を建築したのなら「建築確認済証」などを取得あるいは作成しておきます。
続いて、「登記申請書」を作成します。
そして「登録免許税」を納付し、登記申請書やその他準備した書類を管轄の法務局に提出して基本的な作業は終了です。
※法務局への提出は、窓口でするほか郵送またはオンラインでの提出も可能。
なお、登記手続では重大な権利関係を取り扱うことになりますし、専門性の高い手続でもあるため、登記の専門家である司法書士へ任せるのが一般的です。
登記申請後は登記識別情報を保管
法務局での登記申請にあたっては、登記官が審査を始めます。申請人に対して申請の意思があることの確認をしたり、権利の変動について実際に発生したのか確認したり、厳格にチェックが行われます。
※表示に関する登記の場合は書面審査だけでなく現地で調査が行われるケースもある。
また、こうした審査を行うため、申請から登記が完了に至るまで数日~数週間ほどの期間を要することがあると覚えておきましょう。
登記の完了後は「登記完了証」が送付されますが、この証明書を使う機会はほぼありません。重要なのは、新たに権利を取得した方に送付される「登記識別情報」です。登記識別情報は大切に保管しておきましょう。
不動産登記にかかる費用
不動産登記をする場合、①登録免許税、②各種書類の発行手数料、③司法書士への依頼費用が発生します。②に関しては状況に応じて若干の変動があります。③は必須ではないものの、安全のため司法書士に依頼を出すケースがほとんどであるため、必要経費として捉えて負うと良いでしょう。
それぞれの金額など、相場を以下にまとめます。
不動産登記にかかる費用 | |
---|---|
登録免許税 |
不動産登記の原因(売買や贈与、相続など)によって税率が変動する。原則は不動産の価額に「0.4%~2%」の税率を乗じた値が登録免許税額となる。 例)固定資産税評価額3,000万円の土地を購入した場合 ※原則、土地の売買による所有権移転登記では税率「2%」が適用されるが、2026年3月31日までは軽減税率の適用を受け、「1.5%」で計算する。 |
各種書類の発行手数料 | 戸籍謄本、印鑑登録証明書、住民票、公図など、必要に応じていくつかの書類を作成・発行しないといけない。役所の窓口で発行を請求するとき、1通あたり数百円の手済料が発生する。 |
司法書士への依頼費用 | 司法書士に支払う報酬金額は、司法書士事務所によって異なる。おおむね5万円~10万円ほど。もっと低い金額、もっと高い金額になることもあるため、最初の面談時に費用のことはよく確認しておく。 報酬金額が変わる要素としては「不動産価格」「登記の種類」「債権額(抵当権設定登記の場合)」「日当の有無」「必要書類の作成・取得依頼の有無」などが挙げられる。 |
不動産登記の手続全体としては、10万円以上、数十万円ほどの費用負担がかかるものであると認識しておくと良いでしょう。費用のことや手続のことなど、困ったことがあれば司法書士に相談すると良いです。